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第七圏 暴力者の地獄
「他者や自己に対して暴力をふるった者が、暴力の種類に応じて振り分けられる」第七圏、暴力者の地獄です。
第七圏は三つの環に分けられ、第一の環が「隣人に対する暴力」(隣人の身体、財産を損なった者が、煮えたぎる血の河フレジェトンタに漬けられる)、第二の環が「自己に対する暴力」(自殺者の森。自ら命を絶った者が、奇怪な樹木と化しアルピエ(怪鳥)に葉を啄ばまれる)、第三の環が「神と自然と技術に対する暴力」(神および自然の業を蔑んだ者、男色者に、火の雨が降りかかる(当時のキリスト教徒は同性愛を罪だと考えていたため))となります。
第一の環が「ディーゼル」「ノース・プロジェクツ」「シェイズ・オブ・グレイ」「オーク・ニューヨークシティ」、第二の環が「ネイキッド・アンド・フェイマス」、第三の環が「ラグ&ボーン」「ジョン・ヴァルヴェイトス」、そしてブランドではなくスタイル名の「ダッドコア」「#メンズウェア」「OGプレップ」がはさまり、「ブルックス・ブラザーズ」「バンドオブアウトサイダーズ」と続きます。
・ディーゼル
・ノース・プロジェクツ
・シェイズ・オブ・グレイ
・オーク・ニューヨークシティ
・ネイキッド・アンド・フェイマス
・ラグ&ボーン
・ジョン・ヴァルヴェイトス
ディーゼルは1978年に設立されたイタリアのブランド。デニムや印象的なビジュアルを用いた広告等が有名です。ロゴものや小物も多いので、日本でも知名度は高いと思います。ジップやポケットが目立つなど、装飾的なアイテムも多いような。
ノース・プロジェクツはデンマークのブランド。2004年にストリートウェアのセレクトショップとしてスタートし、2009年からはブランドとしてコレクションも発表しています。クラシックかつストリート色もあるデザインに、プリマロフト(人口羽毛)を中綿に使ったコートなど、機能性を生かした服は見ていると北欧を感じます(単純)。
シェイズ・オブ・グレイは2007年、アメリカで始まったブランド。インターネットで服の画像を見ていると、ミリタリーやワークを取り入れつつ、少しセレブっぽいというか、やんちゃ(?)な雰囲気です。
オーク・ニューヨークシティは名前の通りニューヨーク発のブランドで、2005年に開店したハイエンドセレクトショップOAK NYCのオリジナルライン。モードなモノトーンを中心に、ロングのMA-1など、シンプルさとクセのある雰囲気が合わさった服という印象。Lui'sみたいな感じでしょうか。わかりませんが。
ネイキッド・アンド・フェイマスはカナダのブランドで、2008年から続いています。岡山県産の良質なデニム素材を使ったジーンズが有名。コミック風に描かれた女性のイラストがアイコンに使われています。32オンスの分厚いデニムで話題になるなど、ヘビーウェイトなジーンズも特徴のようです。
ラグ&ボーンも、デニムを軸として2002年、ニューヨークで始まったブランドですが、現在ではデニム以外にもさまざまな服を展開しています。シンプルでオーセンティックなデザインを上質な素材で見せるブランドという印象です。
ジョン・ヴァルヴェイトスはカルバン・クラインやラルフ・ローレンで経験を積んだジョン・ヴァルヴェイトスによって2000年スタートしたアメリカのメンズ・ブランド。レザーやスリムなスエードのジャケットなど、アメリカン・ロックを感じる服が多く見られました。日本では特に香水が人気の様子。
・ダッドコア
・#メンズウェア
・OGプレップ
ここからの三つはブランド名ではなくスタイル名といった感じです。
ダッドコアは、まさにダッド、お父さんの格好のことで、お父さんがふだん着ていたようなポロシャツ、チノパン、ベースボールキャップ、ボリューム感のある謎スニーカーなど、「オシャレ」とは程遠いイメージながら、着心地や履き心地は良い、といった格好を指しています。特に「ダッドスニーカー」はバレンシアガのトリプルSを筆頭にさまざまなハイブランドから提案されていました(います)。
#メンズウェアは、……わかりませんでした。インスタを見ても普通の海外スナップみたいなものばかりで、なぞです。そのまま自分の服装をインターネットにタグ付けして投稿しはじめる、みたいな意味なのでしょうか。
OGプレップは、……これもわかりませんでした。OGはたとえばスニーカーだとOriginalのことで、名作を完全復刻したモデル等を示すことが多いですが、これもそうならオリジナル・プレップで、プレッピースタイル(アイビーリーグの大学に入るための予備校=プレップ・スクールの学生が、いわゆるアイビースタイル(紺色のブレザー、ボタンダウンシャツ、白色のコットンパンツ、ローファー)を崩して(パンツをデニムに、靴をスニーカーに等)着はじめ、それを大学に入っても続けたことから誕生したスタイル)を指すのかな、と思うのですが、合っているのかちょっと自信がありません。
・ブルックスブラザーズ
・バンドオブアウトサイダーズ
最後にブランドが二つ出て、第七圏はおしまいです。
ブルックスブラザーズは、1818年創業の長い歴史を持ったアメリカの紳士服店(レディース、子供服もあります)。一号店はニューヨーク。数々の大統領が着用し、アメリカで初めて既製品のスーツを販売するなど、米トラディショナル・スタイルには欠かせないブランドとして、前述のアイビースタイルにもおなじみです。日本には1979年に進出し、全国ほか、2020年にはこれまでの青山から移転して新たに表参道に旗艦店を構えています。
バンドオブアウトサイダーズは、2004年にアメリカでスタートしたブランド。丁寧なテーラリングと上質な生地、アメリカのトラディショナルなスタイルを基調としている点はブルックスブラザーズと似ているかもしれません。ただ、そこにレザーのブレザーやパッチワークのデザインなど、遊び心が加わるのが特徴的。定番はボタンダウンのシャツ。ただ2015年にブランド休止し、17年に別のデザイナーによって再開して以降は、少しストリートらしさがあり、トラッドの雰囲気が減っている印象です。日本では2013年に東京千駄ヶ谷に路面店を出していましたが、ブランド休止時に閉店しています。
第七圏ではいろいろなタイプのブランドが出てきましたが、無理にまとめると、素材は上質、デザインは面白さと遊び心が感じられるもの、さらに定番のスタイルも押さえる、というような感じでしょうか。スケーターファッションなど、ストリート志向だった第四、第五辺りから、ミドルクラス・ブティックを経由して、かなり服好きらしいブランドが並んできています。個人のセレクトショップやバーニーズのようなこだわりの強いショップが扱うブランド、みたいな雰囲気です。年齢的にも、20代というより30代、40代が着ても似合いそう。日本だとコモリやヤエカのような、日常にも馴染む素材にこだわったブランドが近いのでは。ちがったらすみません(すぐ謝る)。
と、こうして見てきましたが、いよいよ次からは長い長い第八圏に入っていきます。いったん、ここまでお読みいただき、ありがとうございました。続きます。